【レビュー】THE FULL TEENZ『魔法はとけた』
- By: 山田 慎
- カテゴリー: Disc Review
- Tags: THE FULL TEENZ


魔法はとけた
生き埋めレコーズ, 2014年
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彼らは音楽を“リブログ”する。現実で、そして途方もないインターネットの海で見かけたフェイバリット・ミュージックを、誰よりも速いスピードでスクレイピングし、音に重ねてゆく。
京都在住、20代前半の3人バンドTHE FULL TEENZは僕よりも10ほど歳が離れているのであるが、自分と同世代バンドと活動方法が異なり、それが実に新しく見える。my letterもインタビューで応えていたが、30代のハードコアパンク・バンド、あるいはDIY精神を掲げて行動した音楽家たちは、現場を中心に考え、それこそリアルにつながりを求めた。音楽性も大変近いところにあり、リスナーたちもそれを好む者が多かったはずだ。ファンジンやテープまたはレコードでリリースするなど、行動には芯そのものが太く、シーンが結成されていった。一方でTHE FULL TEENZは制約を求めず、フリーキーに音楽をやっているように見える。
もちろん、ハードコアやメロディック、例えば80’s-90’sのメロコア・ムーヴメント、Snuffy Smilesなどの影響を受けていることは一聴すれば明らかであり(1分台のショット・チューンを乱打!)、スタジオ・ライヴやカセット・テープでの販売(本作はCD)を実施しているのも同様である。だが、アノラック系からシティ・ポップまで、今のインディー邦楽シーンにも呼応するセンシティヴな一面もある(例えばHomecomingsやYogee New Waves)。
彼らが主体となったレーベル〈生き埋めレコーズ〉は『生き埋めVA』をリリースしたが、全国から好きな音楽をスクレイピングした、まさに“リブログ・ミュージック盤”と名付けてよいだろう(バンドのウェブ・サイトとして利用しているTumblrの主機能がリブログである)。かつて同郷のdOPPOは『墓場VA』を出したが、それは京都シーンにおける『Making Up New Lines』であった。THE FULL TEENZは地域性を取っ払い、10年代に実現させた。そういった意味ではメジャーやインディー、はたまた洋邦関係なくかき混ぜまくっていた、小山田圭吾の〈トラットリア〉の如く、点と点をつなぎまくって欲しい。