【レビュー】クリスマスの新たな名曲 | ビバ☆シェリー『クリスマスソング』
- By: 二宮 大輔
- カテゴリー: Disc Review
- Tags: ビバ☆シェリー


クリスマスソング
SIMPO RECORDS, 2016年
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例えるなら、80年代のハリウッド映画に登場する賑やかなパブのジュークボックスから流れる往年のクリスマス・ソング。子供のころ何も考えずにワクワクしていたクリスマスの高揚感を、ビバ☆シェリーのクリスマス企画CDを聴いて思い出した。そんな感覚に陥るのは音楽の魔法の効用であり、そんな魔法をいともたやすく体現する彼女たちには舌を巻くばかりだ。
2000年、京都で結成された女性2人組。メンバーはシンセサイザー&ヴォーカルのSATOと、溺れたエビ! にも参加する木琴&ドラムスのhimeco。2010年から活動を休止していたが、今年3月にSIMPO RECORDSからEPを発表すると、4月から木屋町アバンギルドで自主企画イベントを開始、10月にボロフェスタに出演するなど、精力的に動き出した。そして今月リリースされた本作も、今のビバ☆シェリーの勢いを象徴する充実した内容となっている。
表題曲のM1「クリスマスソング」は、ベテランのピアニスト大前チズル、京都インディーズの若手フライデイフライデー、THE FULLTEENZ伊藤祐樹など、多数のミュージシャンをゲストに迎えて織りなす煌びやかな一曲。スタンダードなクリスマス・ソングM3「ジングルベル」では、ジャズ・シンガーのヨシノミナコが、フェイクをきかせた声で遊び心たっぷりに歌い上げる。錚々たるメンツを的確に統率できるのは、ビバ☆シェリーの幅広い交友関係と、高い演奏技術があってのことだ。
M1同様、多数のゲストが参加したM5「メリーゴーランド」にも注目したい。次々とメインボーカルを交代しつつ、変拍子にラップが続く、まさに遊園地のアトラクションのような一曲。本作のレコーディングには、多重コーラス、チェロ、オルガン式の楽器ハーモニウムなど、100以上の録音トラックを要したという。この爆発的な創作力こそがバンドの現在を大いに物語っている。来年2月にロンドンのレーベルmottomottoからアナログ盤のリリースも決まっている2人は、この先どんな魔法を見せてくれるだろう。