WADA SHINJI: PANA CUT 8 / PANA 8
- By: 堀田 慎平
- カテゴリー: Disc Review
- Tags: WADA SHINJI


PANA CUT 8 / PANA 8
birdFriend, 2014年
BUY: birdFriend DISTRIBUTORS
「最近注目しているレーベルは?」と尋ねられれば私は迷わず「birdFriend」と答える。goat、bonanzasのメンバーでありYPYとしても活動している日野浩志郎が主宰する関西拠点のレーベルである。全ての作品がカセットテープでリリースされ、2013年の発足以降YPYはもちろんワンオートリックス・ポイント・ネバーらUSアンダーグラウンドシーンとも呼応するようなノイズ、ドローンの要素を含む電子音楽のアーティストを中心にリリースしている。
本作はそこからリリースされた和田晋侍のドラムソロ音源。A面の「PANA CUT 8」はドラムソロをさらに彼自身がカット、エディットしたコラージュ作品。B面「PANA 8」は2007年の音源をリマスターしたもの。共にアンプリファイドされたドラムで演奏されている。レーベルのイベントで実際に目にすることが出来たそれはバスドラにスピーカーが埋め込まれ、フロアタムにはコンタクトマイクが取り付けられ、さらに巨大なアンプが置かれているという要塞のようなドラムセット。加えて本作レコーディング時にはドラムソロにも関わらず約10台ものギターアンプ、ベースアンプが並んだという。このアンプリファイドドラムによって和田は一人で緊張と緩和、静寂と爆音が繰り返されるノイズとビートの世界を生み出している。昨年リリースされた自身主演の映画「太秦ヤコペッティ」のサントラが多くのミュージシャンと共に映画の世界観に合わせノイズ、フリージャズ~歌ものにまで挑戦するという音楽家和田晋侍の柔軟性を覗かせた作品とするならば、他の楽器との調和など全く頭にない異様なドラムセットによって生み出された本作はドラマー和田晋侍の探究心、欲望がぶつけられた作品だ。
birdFriendは発足して一年足らずの間に次々と “尖った”音を世に送り出している。巨人ゆえにデカイ、DMBQなどのメンバーでありアンダーグラウンドシーンにおける最重要ドラマーである和田晋侍による本作はそうしたレーベルの勢いを加速させ立ち位置をより明確にしたものと言えるだろう。