【レビュー】ヤバイTシャツ屋さん「そこまでヤバくない」

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ヤバイTシャツ屋さん「そこまでヤバくない」

ヤバイTシャツ屋さん
そこまでヤバくない
FUZZ MUSIC RECORDS, 2015年
BUY: Amazon CD, 三国ヶ丘FUZZ店頭, ライヴ会場物販

キタでもミナミでもない、大阪エリアの南に位置する街、堺が最近騒がしい。

その中心にあるのは、三国ヶ丘FUZZというライヴハウスだ。快進撃が止まらないKANA-BOONのホームであり、南大阪エリアの数少ないライヴハウスということで、この地域の登竜門的な役割を担い、多くの若手が集うことで横の繋がりも生まれ、シーンの形成に一役かっているのだろう。その三国ヶ丘FUZZから新たな刺客が現れた。その名も、ヤバイTシャツ屋さん、通称ヤバTだ。メンバーのこやま(Vo, G)は「寿司くん」名義で、岡崎体育やみるきーうぇい、ハウリングアンプリファーといった同世代アーティストのPVを手掛けており、この寿司くんを通したバンドの繋がりが堺発信のシーンを更に面白くしていキッカケになる……日もそう遠くないだろう。そして、その渦中ど真ん中のヤバTが、2015年4月に待望の初音源『そこまでヤバくない』をリリース。タイトルに反して、この作品は憎たらしいほどかっこよくて、十分ヤバイ作品だ。

冒頭を飾るのは、地鳴りの様なギターとベースが不敵に鳴り、ヤバTワールドの幕開けを宣言する「喜志駅周辺なんもない」。荒々しいギターフレーズのリフレインと勇ましく走り抜けるドラムが一転サビでは可愛らしいメロディーに姿を変える。ギラギラした空気を一瞬にしてカラフルな空気に変えてしまう。続く2曲目は、「DQNの車のミラーのところによくぶら下がってる大麻の形したやつ」。冗談めいたタイトルとは裏腹に、叙情感たっぷりのメロディーが鳴る。だがしかし、楽曲タイトルが口酸っぱく繰り返されるもんだから、聴き終わったあと脳裏に浮かぶのはエアフレッシュナー……。これぞまさに珠玉の“迷”曲。

続く「ネコ飼いたい」では、ドラムのビートに合わせてこやまが「ネコ飼いたい」を連呼! 呆気にとられていると、ツービートを刻み、爆速パンクチューンかと思えば、後半には、シンガロングを交え、さながらNHK「みんなのうた」風にアレンジ。何じゃそら、とニヤついていると、轟音のギターがその雰囲気をぶち壊す。たった3分半で目まぐるしくリスナーを翻弄する全く憎たらしい楽曲だ。ラストには、盆地テクノで関西を賑わせている岡崎体育Remixの「ネコ飼いたい」。ここまでのバンドサウンドを度返ししたスタイリッシュなサウンド。こやまの少々がなり気味の歌声としばたの無機質な歌声がシティ・ポップ的な音にマッチしている。今作のラストが、バンドサウンドではないというのも彼ららしい皮肉だ。

岡崎体育『BASIN TECHNO』

岡崎体育
BASIN TECHNO(初回生産限定盤)
SME, 2016年
BUY: Amazon CD&MP3, タワーレコード, iTunesで見る

どの曲もツッコミ所満載の歌詞だが、実はそれが耳に残るキャッチーなフレーズになっている。1曲のなかで様々に展開していくメロディーに隙はなく、そのそれぞれが自分こそメインメロディーだ! といわんばかり存在感を示している。この歌詞とメロディーの織成す絶妙なバランスが不真面目なのにかっこいい、リスナーを裏切り続ける中毒性抜群のヤバTサウンドをつくり出しているのだ。

つまるところ、このシングル、ヤバイんですよ。

ヤバイTシャツ屋さん『ピアノロックバンド ライブ会場限定盤』

ヤバイTシャツ屋さん
ピアノロックバンド ライブ会場限定盤
FUZZ MUSIC RECORDS, 2015年
BUY: Amazon CD

Author Profile

佐藤 ワカナ音楽ライター、DJ
1988年生まれ。音楽フェスの為に全国津々浦々。邦楽ロックに軸足を置いています。不定期でDJやったりもしてます。小説よりも漫画派です。