【レビュー】とんねるず全盛期の輝きが詰まっている | 野猿『撤収』

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野猿『撤収』

野猿
撤収
avex trax, 2001年
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京都講座東京特派員(ややこしい)の峯です! 9月27日(日)の〈音楽ライター講座 in 京都〉は音楽歴史街道編“2001年”をテーマとして開催されました。ストロークス、ホワイトストライプス、映画『オー・ブラザー!』O.S.T、レイ・ハラカミ、菊地成孔、宇川直宏……というキーパーソンを軸に講義が進んでいきました。しかし何といってもこの日は講座生としてひょっこり参加していた「日本の電子音楽」の著者・川崎弘二さんに、冒頭から急遽ご登壇いただいたことに尽きるでしょう。電子音楽の歴史からコーネリアス、レディオヘッド、シガーロスまで、そのお話は多岐に渡りました。岡村さんや講座生からの質問にもロジカル・簡潔明解にお答えいただき、本当に有意義な時間&京都講座史上最も岡村さんが手に汗握る回となりました。ご登壇の模様は後日ki-ftに記事としてアップされる予定ですのでお楽しみに!

そして講座生もそれぞれの“2001年作品”をレビューして持ち寄りました。その中から野猿のレビューをお送りいたします。

【レビュー】とんねるず全盛期の輝きが詰まっている | 野猿『撤収』

2001年のバラエティ史を考えると“お笑い第三世代の全盛期終焉の年”と言える。ダウンタウンはドラマ・CM「明日があるさ」があり、Re:Japanとしてのリリースでもヒットを飛ばしたものの、一方で4年ぶりに特番として復活させた『ものごっつええ感じ』の視聴率が振るわずテレビコントから手を引いた年。ウッチャンナンチャンにとってはポケビ・ブラビ旋風を巻き起こした『ウリナリ!!』がリニューアルしたものの結果的に翌年の終了に歩を進め、また『笑う犬シリーズ』では、はっぱ隊の『YATTA!』が一大ブームを起こしたものの“冒険”から“情熱”となりコントの数が著しく減少した年。一方で『ワンナイ』、『はねるのトびら』、『ココリコミラクルタイプ』など新時代のコント・お笑い番組がスタートし、いわゆる第四・五世代が最前線に立つ流れに動いていくのである。

2001年の上記の流れは第三世代もう一組の巨頭・とんねるずにも当てはまり、野猿が撤収(=解散)した年となる。『とんねるずのみなさんのおかげでした』からとんねるず+番組スタッフで98年に結成されたユニット。彼らと同年にリリースしたRe:Japan・はっぱ隊・くずを始め、多くのお笑い芸人による楽曲と違うのは、番組発でありながらキャラを乗せていないという点だ。多くの芸人が自らのテリトリーではない歌を出すにあたってコントキャラやコンセプトを付加し“バラエティの枝葉活動”とすることにより番組主導で盛り上げ、芸人自身も気兼ねなく歌手を“演じ”てきた。しかし野猿はとんねるず+スタッフという普段の関係性をそのまま歌謡界に持ち出し、恥じらいもなく持ち前のカリスマ的魅力と力技、また秋元康+後藤次利によるアーバンなサウンドで本当の歌手・アイドルとして成立させてしまうことに面白さを見出したグループであった。

ズブの素人(=番組スタッフ)から平山晃哉(テル)・神波憲人(カン)といったとんねるず2人に引けを取らない人気者を生み出し、バックのダンスメンバーもリリースごとに小慣れてダンサーとして様になっていく様子をバラエティとして茶化しながらも追いかけていく。またメンバー人気投票を行い最下位になれば卒業させられるという総選挙の構図など、秋元康のキャリアにとっても現在のAKBに引き継いだコンセプト・企画を生み出したグループとして功績は大きい。

本作は解散発表後に発売され、3年間の活動期間で発売されたシングル全て+新曲で構成されたラストアルバムである。楽曲は一貫してR&Bやソウルミュージックを主体とし、今はEXILE一派に引き継がれた日本のヤンキー文化とブラックミュージックを模した「Be Cool!」、ブルー・アイド・ソウルを日本の歌謡曲として消化した「First Impression feat. CA」、70年代ディスコの「Chicken guys」など2015年のブラックミュージック再勃興の今こそ、再度新鮮さを持って聴くことが出来るものばかりだ。その中でも唯一「Fish Fight!」は鮒について歌ったコミックソングで異彩を放つが、これがラストシングルということで、野猿は3年に渡る壮大な“ギャグ”だったとさらっと示してしまう。野猿=アーティストとして完全に浸透されてしまったことに対する逆説的で強烈なオチとしてのコミックソングで見事に期待を裏切って幕を引いているのである。

とんねるずの笑いはよく“素人芸/身内、内輪ネタ”と称されるが、一方で熱心に追いかければ追いかけるほどその時代の若者を中毒的に取り込んでいくカリスマ性で芸能界をのし上がってきた。だからこそ「雨の西麻布」のムード歌謡も「ガラガラヘビがやってくる」といったコミックソングも、また「情けねえ」「一番偉い人へ」といった時事性に富んだ社会風刺の曲だって真っ直ぐに若者に刺さった。事実、野猿も撤収コンサートは国立代々木競技場第一体育館で盛大に行われ、また撤収を惜しむファンから自殺者も出たほどの社会現象となった。その後のとんねるずの音楽活動といえば矢島美容室(2008年~2010年)があげられるが、こちらはコントチックな“キャラを演じる”というとんねるずの強みを排したものであり、現在まで一時代を築くような試みはなされていない。だから一層野猿にはとんねるず全盛最後の輝きが詰まっていて、かつその音楽性やコンセプトは現在のEXILEやAKBに引き継がれ、日本のポップ史にもバラエティ史にも重要事件として刻み込まれている。

Author Profile

峯 大貴音楽ライター兼社会人、京都講座東京特派員
1991年大阪生まれ。2014年3月に京都講座 で制作した「現代関西音楽帖」を編集長として発刊し、同志社大卒業、就職のため上京。 現在もライターとしてQuick Japan,CDジャーナル,BELONGなどに寄稿。落語とフォークをこよなく愛する生粋の大阪人。HITORI JAMBOREE~Mine Daiki Official Tumblr~