ヤクタタズ: 役立つヤクタタズL.P.

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ヤクタタズ: 役立つヤクタタズL.P.

ヤクタタズ
役立つヤクタタズL.P.
Captain Kyouso Records, 2014年
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中心から外れた場所だからこそ育つ文化もある。日本のデトロイト、四日市にも個性的なアクトが集まっている。ガソリン、アントニオスリーのようなガレージ・パンク勢を始め、90’sオルタナティヴを鳴らすbasquiat(バスキア)に、現代に蘇る昭和ジャズ歌謡モノポリーズのような変り種も。新世代ガレージ・バンドとしては、各所で出禁寸前のパフォーマンスを繰り広げるAgurakakushiやover skill、三重大発ポスト・パンクPOP-OFFICEと、統一性が有るような無いような不思議なシーンが形成されている。

本稿で紹介するヤクタタズは、ライヴ・バー経営の傍ら、独りユニット“雰囲気”として活動する橋本ゴウと、ロック・バンドWEENIE RADIO SHOPの中川将治と秋山和希、そして井口剛史の4人組。オルタナティヴ・ロックを基調に、ジャズ、ファンクやブルースの素養も感じさせる。その雑食な音楽性にキャッチ・フレーズを付けるとしたら四日市のユニコーンだ。メイン・ソングライターでベース/ヴォーカル橋本ゴウの理屈めいた作詞センスにユーモアを上書きする歌心、時折抑えきれず激情がもれるさまは奥田民生を否応なく連想させる。次いで多くの曲を手がけるドラム/ヴォーカル中川、そして1曲のギター/ヴォーカル秋山は、中和するかのように爽やかな歌声とシティー・ポップスな曲を提供。そして橋本と2曲共作する井口の鍵盤も清涼なアクセントを添える。

なんとなく過ぎる青春の日々の輝きと悔恨を綴る歌詞が中心だが、2曲目「放射線と環状線が行く方へ」では失恋ソングを装いながら原発に対する感情をさらりと盛り込む。彼らの住む三重は原子力発電所の建設を拒んだ県なのだ。最終曲「夕暮れオレンジ道路」では子どものかくれんぼを題材に、古き良き時代から未来まで僕らの友情、愛情、美味しい夕ご飯、そういった風景が続くことを願う。誰もが共感できるようなポップスの求道者たる彼らの面目躍如だ。