V系バンドの演奏へのプライド~OL兼業ライターのひとりロクサミ(仮)Vol.8 最終回
- By: 小川 あかね
- カテゴリー: Column
- Tags: AMBEEK, Ashmaze., DELUHI, FEST VAINQUEUR, Houts, KANSAI ROCK SUMMIT, Lavitte, LOVE LOCK, LUNA SEA, Sclaim, SIAM SHADE, Vagu*project, V系, ロクサミ, ヴィジュアル系, 極彩G12, 雅-MIYAVI-

本稿は、2020年のKANSAI ROCK SUMMIT(通称ロクサミ)が新型コロナウイルスの影響で中止になったことを受け、出演予定だった81組のヴィジュアル系(以下V系)バンドを紹介しようと企画した短期集中連載です。ついに最終回です!
「1/3の純情な感情」といえば、SIAM SHADEの代表曲であると同時に、V系史のみならず、アニソン史、J ROCK史にも刻まれる名曲である。LUNA SEAとはインディーズ時代に拠点としたライブハウスが同じで、直属の後輩バンドとしても知られるSIAM SHADEが、LUNATIC FEST.2015出演した際、この曲のイントロのアルペジオが響きわたった瞬間、会場から大歓声が起き、そして大合唱になったことを、私ははっきりと覚えている。
多くのリスナーが口ずさめる、メロディアスで間口が広いその楽曲に耳を澄ませてみると、こだわり抜かれたバンドアンサンブルがあり、そしてそれは、卓越した演奏技術により成り立っていることに気が付く。
振り返れば、V系シーンにはこれまでも、高度なテクニックでキッズたちを夢中にするヒーローがたくさんいた。職人のように正確かつ美しい演奏で魅了するSIAM SHADEのDAITA(G)、超絶テクニックで圧倒するDELUHIのLeda(G)、スラップ奏法やアームを駆使した独自のプレイスタイルを確立させたMIYAVIなどなど、枚挙にいとまがない。
“ヴィジュアル系”と呼ばれはじめた90年代は、“見た目系”というこの言葉に反発したバンドマンも多くいた。たが、今となっては、V系は総じて演奏もうまいという認識があるだろう。それは、この言葉に反発し、技術を磨いた90年代のバンドマンたち、そして、その演奏力の高さにも憧れを抱き、夢中になって楽器を弾いてスキルを身につけた後続バンドたちの功績である。
連載最終回の本稿では、そのような先人たちの演奏に対する姿勢やプライドを受け継ぎ、華やかな見た目と覚えやすいメロディ、そして、確かな演奏力という、V系の矜持を感じさせる者たちを紹介したい。
FEST VAINQUEUR
2010年代の関西V系シーンを牽引したバンドである。メンバーの脱退や、バンド名の使用停止など、近年は思うように活動できない状況が続いたが、2020年7月、再びFEST VAINQUEUR名義での活動を再開させた。新作でも、難易度の高いフレーズをなんなく弾きこなしつつも、分かりやすい歌詞とメロディで親しみを感じさせる彼らの魅力は健在だ。歌詞については、弱さや迷いもさらけ出した、真っすぐな言葉の数々には、今の彼らが放つからこそ、格段の説得力がある。再出発したFEST VAINQUEURがどんなストーリーを描くのか、この先も楽しみだ。
Sclaim
活動休止期間を経て2014年に再び始動した4人組。エレクトロなシンセの音色と4つ打ちのダンスロックにまず耳を惹かれるが、歌のメロディが憂いを帯びているところがとてもV系らしい。心地いいビートのなか、間奏で飛び出す速弾きのギターソロには度肝を抜かれる。
LOVE LOCK
2016年結成の3人組。「melody.」という曲名にふさわしい、とても覚えやすい旋律のロックナンバー。シンセの音色による装飾はあるけれど、奇をてらわず、歌を届けることを重視する姿勢からは、関西の大先輩バンド、Dear Lovingと通じるものを感じた。
極彩G12
A&Dというバンドで活動していたTAKA(Vo)とYUKI(G)が、A&D活動休止後に2016年に結成したバンド。とにかく歌もギターもうまい。歌には音域も広く声量もあり、そのハイトーンボイスには、EARTHSHAKERら関西出身のハードロック勢の影響さえ感じる。歌と双璧をなすギターの迫力も圧巻。2020年9月をもってTAKA(Vo)が脱退した。
Ashmaze.
イントロからいきなりギターのスラップと速弾きからはじまる、楽器隊のテクニカル面を存分に楽しめる1曲。2019年に始動した5人組バンド。
Lavitte
前身バンド、“残り物に和服ガール”を経て、2018年に始動した5人組。hideのようなポップセンスを感じさせる遊び心のあるギターのフレーズに、シンコペーションで駆け抜けていくサビが気持ちいい。
AMBEEK
2019年に始動した5人組。イントロなしで、歌から始まる1曲のため、歌にグッと引き込まれるのたが、次の瞬間、主張の強い楽器隊の演奏に驚く。各楽器のフレーズのアイディアも詰め込みまくりで、まるでバンド内で激しくバトルしているかのような迫力。
Houts
2018年始動の5人組。鍵盤の美しい音色に、マイナー調の切ないメロディ、女性口調の飾らない言葉で喪失感、虚無感を歌う歌詞が、絶妙に曲調とマッチし、哀しい。
Vagu*project
横須賀サーベルタイガー時代のHIDEを彷彿とさせるヴィジュアルにまず目をひかれる。2006年結成で、現在は3人で活動している。とにかく技巧派。YouTubeのチャンネルには様々な曲のギターカバー動画もあがっているが、こちらも見ごたえ十分。ギターキッズにはたまらないはず。
◆小川あかね
セーラームーン&SPEED世代。ヴィジュアル系村の住人。ガンダムはシャア派。モビルスーツはシナンジュ。好きなタイプは空条承太郎。声優沼に腰くらいまで浸かってます。
akane.o1218*gmail.com (*=@)
Twitter:@akam00n
アルケミ/JE:NOVA/GzNDLH/アダビトヲコガラヌ/Leetspeak monsters/怪人十二面奏/SHIVA
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