【コラム】名古屋栄、矢場町のフリー・スペース「spazio rita(スパジオ・リタ)」
- By: 森 豊和
- カテゴリー: Column
- Tags: apple light, HUSH, sukida dramas, tigerMos, ジョセフ・アルフ・ポルカ, トゥラリカ, 古明地洋哉


京都から新幹線でわずか30分、名古屋においてもインディー・ミュージシャンの親密なコミュニティーが形成されている。近年新たにtigerMosやsukida dramas、CRUNCHにHUSH、トゥラリカ、MILK、ジョセフ・アルフ・ポルカとその後輩バンドであるムーンといった具合に個性的なアクトが現れてきている。鶴舞K.Djaponのようなおなじみの箱に加え、飲み屋にPA機材を備え付けた新栄きてみてや、雑貨屋2階を活用した大須サイノメのような手頃なライヴ・ヴェニューが増えている点も京都と似ている。
特に本稿では、栄に新しくできたspazio ritaについてふれたい。地下鉄矢場町から徒歩5分、ビル地下で天井の高い、白を基調にすっきりしたレイアウト、普段はカフェ、展示スペースに用いられている。ワークショップや演劇なども行われ、土日にはロック・バンドからアイドル、ジュークまで幅広いジャンルのイベントが開催される。いわば名古屋の新しい文化交流、情報発信の場として機能しているのだ。

2014年11月3日、同所で行われたApple Light/古明地洋哉ツーマンを観てきた。Apple Lightのギター・ヴォーカル戸塚香輔による企画。古明地洋哉といえばWINO、syrup16g、七尾旅人らと並びゼロ年代オルタナティヴを代表するミュージシャン。憧れの人を前に緊張が良い方向に作用したのか、Apple Lightも素晴らしいパフォーマンスを見せた。追立祐也の力強いドラミングに、エリオット・スミスのようなUSインディーの影響を感じさせる孫田直樹らのギターが優しく絡む。ベース堀井ゆりかもコーラスだけでなく数曲でヴォーカルをとり、戸塚が歌う哀しい激情が緩和される。全体として「暖かい孤独」とでも呼ぶべきフィーリングを感じた。
名古屋は大阪ほど大都市ではなく、京都ほど長い歴史はない。だから逆にD.I.Y.な活動がやりやすい面もある。個性的なヴェニュー、独立系レコード店、音楽を愛する人々が根強く居て、今回挙げたようなミュージシャンの活動を支えている。他にもまだ日本各地にそんなコミュニティーがあるはずだ。

new morning
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