【インタビュー】紀州ロックインパクト代表・山野丙午(和歌山GATEオーナー)

紀州ロックインパクト代表・山野丙午(和歌山GATEオーナー)
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紀州ロックインパクト代表・山野丙午(和歌山GATEオーナー)
紀州ロックインパクト代表・山野丙午(和歌山GATEオーナー)

和歌山県の人口減少が止まらない。2010年に100万人を割り込んで以来、減少し続けている。今年の夏には和歌山市にあった高島屋がまさかの閉店に追い込まれるなど、事態は深刻だ。

そんな和歌山県でも〈紀州ロックインパクト〉(KISHU ROCK IMPACT。以下、KRI)という、ロックフェスティヴァルが開催されるようになった。筆者は和歌山県出身だが、初めてその存在を知ったときは「嘘やろ!?」と驚いたことを覚えている。カラオケボックスの店舗数では全国1位を誇る和歌山県。しかし、ライヴハウスは和歌山市内でも数える程しかなく、1,000人規模でライヴが可能な場所は市民会館を除くと「和歌山ビッグホエール」のみ、という淋しい状況だからだ。そのため和歌山県はロック不毛の地であると思っていた。

今年で4回目を数えるKRI。様々な媒体で紹介記事を度々目にするようになった。しかし、会場である片男波海水浴場へのアクセスの良さなど、ロケーションに関する話題が多く、音楽への本気度についてはいまいち測りかねるところがあった。

年々レジャー化している音楽フェス。興業的に成功し、ブーム拡大を続ける中、音楽への愛情はライト化しているように感じるときもある。かつては音楽ファンにとって夢の場所であったはずの音楽フェスも、乱立しすぎて有り難みが薄くなってしまった。参加者が増加しているわりには、音楽シーンの活性化にはあまりつながっていないといった話も耳にする。そんな最近の音楽フェスブームに対する疑心と、地元である和歌山県に対する複雑な感情をこじらせながら、KRI主催者で県内の数少ないライヴハウスの1つ、「和歌山GATE」のオーナーでもある山野丙午氏に話を聞いた。(取材・文 / 稲垣 有希

「和歌山に住みながらにして音楽で結果を残したい」というバンドが現れた

──単刀直入に聞きますが、このフェスを立ち上げられたのは和歌山の町おこしだけが目的ではないですよね?

もちろん。それはメインではないですよ。

──では、KRI開催の経緯から教えて頂けますか?

まず、和歌山の音楽シーンの流れとして「音楽を仕事にしたい」「ミュージシャンになりたい」という人やバンドは、みんな東京に行くっていうのが今までの主流でした。やっぱり音楽をずっとやっていこうとする人たちにはエネルギーがあるし、カッコイイんですよ。都会に出ていくのは良いことですが、そういう人たちが出て行ってしまうと和歌山の音楽シーンが盛り下がるんです。

──そうなんですか! 具体的にどんなバンドが東京進出した時期ですか?

古いところで、THE NEATBEATSが東京進出した頃かな。15年位前ですね。そして最近だと5,6年前にHEAD SPEAKERとFated Lyenoが東京進出した頃です。シーンの火付け役みたいな人たちがいなくなると、バンドをしたいという人も少なくなって活気がなくなるんです。でも、「和歌山に住みながらにして音楽で結果を残したい」というバンドが現れたんです。それが、DRAW INTO DISORDER、リリーギャング、SEX addictの3バンドです。彼らみたいなエネルギッシュなバンドって、和歌山では非常に稀なんです。だからこそ、この3バンドをなんとかしたいと思いました。

和歌山で結果を出せるようになったら選択肢が広がると思ったんです。東京に行くって勇気がいるんですよ。その話になったときに、メンバーが脱退することもある。それを一旦、地元で結果を出してからなら、そういった話の抑止力になるのかな、と。

──なるほど。確かに、バンドが上京する際にメンバーが脱退してしまうという話はたまに耳にします。

「CDを全国流通させることができれば売れるやろ!」と思っていたので、2009年にレーベルを作りました。タワーレコードとかに売り込みに行ったんですけど、販売目標1,000枚のところ、100枚程度しか発注をもらえなかった。やっぱり先方も名前が売れているバンドの方が取り扱いやすいみたいです。広告を出そうにもお金がなくてね。フェスとかに出られたらいい宣伝になりますが、音楽業界への深いつながりも必要になってくる。「ならば自分で作ってしまおう!」という発想になったわけです。

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