【インタビュー】Shout it Out『Prologue』
- By: 山本 悟士
- カテゴリー: Interview
- Tags: Shout it Out


17歳のときに抱いていた気持ちを歌ったほんとに大切な曲で、あのときに抱いていた気持ちは絶対ずっと忘れたくないなっていう気持ちを込めて。
──1stミニアルバム『Prologue』を5月16日にリリースされるということですが、今何か心境の変化はありますか?
山内 : まだレコーディング中なんですが、僕はこのアルバムをリリースするタイミングで、バンドに変化があるだろうと思っているんですよ。
──どう変わるのでしょうか?
山内 : アルバムのタイトルが『Prologue』なんですけど、プロローグって本とか小説で物語の冒頭じゃないですか。『Prologue』っていうアルバムを出すことで、これまでの僕らをまとめたくて。とりあえず高校生活の集大成っていうものを出し切ってから、Shout it Outの第一章が始まるんだなって。
──本作は既出曲を含む全6曲ということで、まず確認したいのですがリードトラックの「17歳」は以前からライヴで歌われていますが、この曲を作られたのは17歳のときでしょうか?
山内 : そうですね。みんなが18歳になる前に作りました。17歳のときに抱いていた気持ちを歌ったほんとに大切な曲で、あのときに抱いていた気持ちは絶対ずっと忘れたくないなっていう気持ちを込めて。
──あのときの気持ちというと?
山内 : 僕が昔、すごく周りの目が気になる人だったんですよ。無関心が怖かったと言うか、周りが僕に興味を示してくれないことがすごく怖くて。やっと考えをシフト・チェンジできたときに作った曲で、そういう大きな一歩を踏み出した気持ちを忘れたくないなって思って。
──その「17歳」という曲を今18歳になって改めて演奏してみて何か思うことはありますか?
山内 : もちろん成長している部分もあるはずなんですけど、僕自身を作る芯の部分はその頃から変わってないと思うんですよ。今はまだその頃と同じ気持ちで歌っていますね。
──なるほど。「17歳」という曲は17歳のときに作られたということでしたが、思い描いていた17歳でしたか?
山内 : たとえば15歳頃は、17歳はもっと大人だと思っていましたね。15歳だと高校1年生で高校に入学したばかりじゃないですか? つい最近まで中学生だった自分にとっては、17歳の先輩がすごく大人に見えて、「ああ、俺もあんな風になれるのかな」って思ってたんですけど。実際はさっき話した通り、大人ではなかったです。
──Base Ball Bear「17歳」や女性向けファッション雑誌『Seventeen』など世間では17歳はキラキラしていて弾けているイメージがあると思うのですが、Shout it Outの「17歳」という曲は暗いとは言いませんが、決して明るくはないなと思ったのですがいかがでしょうか?
山内 : ほんとにその頃自分が思っていたことを、リスナーにひたすら訴えかけている曲なんです。「俺の伝えたいことを全部聴いてくれ! わかるだろ?」っていう曲なんですよ。
──具体的にどういう事を訴えかけているのですか?
山内 : 先ほどの周りの目をずっと気にしてしまう自分が変われたときの心境は、サビの冒頭にある“大切なのは周りの目なんかじゃ無いだろう”だったり。同世代のリスナーに共感を覚えてもらえるであろう、17歳当時の赤裸々な心情や情景ですね。
──やっぱり歌詞は日常、私生活がリンクするのですか?
山内 : そうですね。僕は基本的に、自分が見聞きして感じたことや実体験を歌詞にしています。
──歌詞に“さぁ今、世界を変える時さ”とありますね。
山内 : 自分の考え方を変えることによって、自分の世界、すなわち環境は変えられると思うんです。実際に自分がそうだったので。だから、悩んでいるなら今の自分を変えてみろよということを伝えたくて。
──他にはどんなことを届けたいと思って歌っているのですか?
山内 : 10代のときってすごくいろいろな壁があるじゃないですか? 大人の意見に押しつぶされたり、学校の校則を守らなければならなかったり。そういうのを何でも受け入れてるだけじゃ青春は謳歌できないよね?って。譲りたくない場面では簡単に屈するなよっていうことを届けたくて、「17歳」は歌っています。
──今日のお客さんを見ていても10代が多かったですね。自分たちの言いたいことが届いているなという実感はありますか?
山内 : 僕はステージからお客さんの目を一人ひとり見ているんですが、ちゃんと伝わってることがわかる表情をしてくれていたと思います。
──もし今「18歳」という曲を作るとするならどんな曲になりますか?
山内 : 17歳が一番大人でも子供でもない年齢だと思うので、多分「17歳」よりは少し丸くなって、幅広いリスナーに届きやすくなるんじゃないかなと思います。その分、青々しさは薄れるんじゃないかと。
──それはなぜでしょうか?
山内 : 自覚がなくても絶対成長してると思うんですよ。そのすごい些細な心境の変化とかが、歌詞に顕著に出てしまうはずなので、リアルな17歳の共感からは少し逸れてしまうと思います。
こんな別れがあるんやったら新しい出会いもいらん! っていうのが去年の春頃の心境やったんです。そのときに『最悪な少年』に出会って、こんなやつらが同世代におるんやって衝撃を受けて。
──今日の堀江学園のライヴのブッキングを見ていてもそうなんですが、10代の出演者が20代と比べると少ないなと思いました。皆さんの同期でもあるバンドが高校卒業を機に解散すると言っていましたし、10代のバンドが減少傾向にあるなと思って。もしかしたら減っているわけではないと思うのですが、頭角を現している10代のバンドがまだまだ少ないという現状について何か皆さんの中でも思うことはありますか?
山内 : ほんとに受験を機に、一緒にバンドをやってきたやつらがたくさん辞めていって、取り残された感じがして寂しかったんです。けど、あらためて冷静に周りを見ると、すごい実力のある同期だけが残っていて。
新山 : 一緒に地元で夢を語っていた仲間が、どんどん解散とか活動休止をしていくのが寂しくて、悔しくて。こんな別れがあるんやったら新しい出会いもいらん! っていうのが春頃の心境やったんです。そのときに“最悪な少年”に出会って、こんなやつらが同世代におるんやって衝撃を受けて。それまでは仲間とバンドを楽しむことばかり考えていたんですけど、彼らを越える気持ちでいなければ、本当の夢には近づけないんだという緊張感が芽生えてきました。今はどんどん他府県の同世代バンドとも交流を持つようにして、良い意味でライバル関係を築きながら切磋琢磨できています。
──レコ発ライヴが5月16日に予定されていて、出演者を見させていただいたら比較的若いバンドばかりですね。それもやはり理由があるのですか?
山内 : そうですね。純粋に一緒にやりたいバンドに声を掛けさせてもらいました。ずっと切磋琢磨していきたいと思っているバンドばかりですね。だから自然と同世代が多くなったんやと思います。
やりたいこと、したいことがいっぱいあるのに年齢とか学校だとかでやりたいことができない欲求不満っていうこのやるせない気持ちは今でもずっとあるし。
──先日「17歳」のMVを撮影され、女性向けファッション雑誌『Seventeen』の専属モデルである藤麻理亜さんが箱の中に閉じ込められた少女を演じられていますが、実際に共演されてみてどうでしたか?
山内 : すごい緊張しました。17歳の頃の僕らってあんな大人じゃなかったんですよ。17歳でもこんな子がおるんかって。(※撮影当時、藤麻理亜さんは17歳)
──先ほども「思ってたより大人じゃなかった」と仰られてましたね。
山内 : すごい大人な17歳もいるんだなっていうことを実感しましたね(笑)。自分の周りのやつって僕らみたいなタイプばかりなんです。「大人になりたくねーよ」みたいなスタンスでバンドやってるやつら。そういうのばかり見てきたんで、ほんとに年下かなと思いました。あの落ち着きは(笑)。
──他のみなさんはどうでしたか?
山内 : 西浦さんどうやった?
西浦 : 俺よりも身長が高いなと思いました(笑)。
全員 : (笑)。
露口仁也(以下、露口)(G) : やっぱ初めての経験やったんで撮影は緊張しましたし、演技というか藤さんのソロ・シーンをモニターで観ながら、あんな全員から注目されている中で役に入り込むのは、俺には絶対無理やなと思いました(笑)。
──箱の中に17歳の象徴として藤麻里亜さんが閉じ込められていて、その外に皆さんがいるんですけど実はみなさんも、出口の見えない暗闇の中に閉じ込められているという構図ですね。やっぱり普段自分たちも閉じ込められていると思うことはありますか?
山内 : 今のところずっと思っていますね。閉じ込められている、縛られているって。やっぱり一番の原因は周りの目です。僕が気にしないと言っても、大人は子供のことを見ているじゃないですか? それで注意もされるし、「ああしなさい、こうしなさい」って言われるし。その窮屈さって、同世代はみんな感じているんじゃないかと思います。
新山 : つい2~3週間前まで校則があって、制服も着なあかんし、すごい窮屈でした。バンドで東京とかいろんなところに行きたいと思っても、平日は授業があって難しいから長期休暇でしか行けなかったし、そもそも運転免許が無いから気軽には行けないしで、口にする目標が全然果たせなかった。年齢や学校という理由で諦めなければならないことへの欲求不満っていうか、やるせない気持ちは今でもあるし。そういう意味で閉じ込められているっていう感覚はあります。
山内 : 俺が書いた歌詞の世界観を全部代弁してくれたな(笑)。
──今の発言の中にもありましたが、東京ってよく「夢の街」などと言われますが、やはり東京でライヴをやるのと大阪でライヴをやるのは違いますか?
新山 : 大阪人特有の心理なのかもしれないんですけど「東京の奴らには負けられへん!」みたいな(笑)。
山内 : 勝手に敵対視(笑)。
西浦 : 大阪では絶対に笑いを取れる鉄板ネタが、東京では全く通用しなくて、大阪が恋しくなります(笑)。
新山 : KANA-BOONみたいな地元の憧れのバンドが、大人に連れて行かれる場所……って、すごい悪い言い方になってますけど(笑)、自分たちもいずれはその背中を追って出て行きたい、夢の街でもあります。けど、やっぱ良いイメージを持っていたかと言われると、はじめは違いましたね。でも、実際に東京でライヴをしてみて、それまでのイメージが全部ひっくり返ったんです。すごい冷たいんだろうと思ってた東京の人は、実はすごい温かかった。ライヴを見てくれた人からのレスポンスもたくさんもらえたし、何よりShout it Outを東京で待っていてくれた人たちがいた。それでどんどん好きになっていきました。