【ライヴレビュー】ボロフェスタ2015
- By: 関西拠点の音楽メディア/レビューサイト ki-ft(キフト)
- カテゴリー: Live Review
- Tags: Amia Calva, BiSH, NATURE DANGER GANG, neco眠る, OGRE YOU ASSHOLE, SATORI, Suess, THE FULL TEENZ, くるり, トクマルシューゴ, パスピエ, フラワーカンパニーズ, ホームカミングス, ボギー, ミライスカート, メシアと人人, 在日ファンク, 奇妙礼太郎トラベルスイング楽団, 平賀さち枝


京都の秋の風物詩といえば〈ボロフェスタ〉が思いつく。ミュージシャンやライヴハウスオーナーなどが中心となって、ボランティアスタッフが集まり、DIYで会場を作り出していく様は、一般的な音楽フェスティバルとの大きな違いだ。そして家に帰ってきたような錯覚。アットホームで情熱的な音が鳴り止まない3日間。2015年も京都KBSホールとMETROで行われ、渋さ知らズオーケストラ、くるり、在日ファンク、never young beachなどが出演。ki-ftのライター2名が当日の様子をレポートする。
坩堝を楽しむ場所
生まれてから30年以上、関西に住んでいるのだか何気にボロフェスタに行ったのは今年が初めてある。ちなみに会場であるKBS京都ホールには何度も行ってはいるのだが、到着して思わず「おえっ!?」と口に出して驚いた。普段は静かな佇まいのホール場外が、いつの間にか高校の文化祭の様に様変わりしているのだ。
「バック・トゥー・ザ・フューチャー」をオマージュした大看板がドーンと立ち、屋台がならび、観客とフェスの関係者、出演者が1つの空間でご飯を食べたり、お酒を飲んだりと実に緩やかな時間が流れている。後々に話を聞くとボランティアの方々が一週間前から朝早くに集まり手作りで設営したようで、和気藹々とした空気はこのDIY精神から来ているのかなと感じた。
また、このDIY的な部分ともう1つこのフェスの魅力がロック、ポップス、アイドルといった異なるジャンルのアーティストが同一空間で楽しめるという事である。パスピエが終わるなり、いきなりEDMがバーンと響くと「京都のアイドル、ミライスカートです。」とステージに可愛い女の子達が出てきて、縦ノリに騒いでいた観客がサイリウムを振り楽しむ、なんてことがあったりと坩堝的な面白さもこのフェスの特徴である。
さて、この坩堝の中で「動」「静」「音」3つのポイントで個人的に面白かったバンドを挙げたい。まず「動」の面では在日ファンクである。まず、髪型、衣装、細かな動きまでJBをオマージュしたハマケンがとにかく動く。「根にもってます」「爆弾こわい」などのヒットナンバーを次々投下、観客からダンスを誘う。特にボロフェスタにちなみ「京都」をやった瞬間観客からは大歓声、前回の出演時に行って感動した「二条城」を観客と一緒にコールをし大きく会場を沸かせた。
在日ファンクが観客に自らの音楽を体感させる面白さだったなら「静」としての魅力を存分に発揮したのがMC時にコンタクトレンズを外して「コミュニケーション嫌いだから、、、嘘だけど」と笑いながら言ってたトクマルシューゴであった。舞台上に配置された無数の楽器並ぶ中「Kitchen」からスタートし「Poker」「Green Rain」と展開。観客を煽ることをせず、淡々としながらも一音奏でると瞼の裏には広大な海原が広がり、またある時には緑溢れる大草原へと観客を誘う。ラストは「Rum Hee」から「Down Down」と畳み掛けて終了。イマジネーションを掻き立てる彼の演奏に終演後しばらく拍手は鳴り止まなかった。
トクマルシューゴが音で大草原や海原を見せたならば2日目に出てきたOGRE YOU ASSHOLEは「音」そのもので会場を魅了した。「フラッグ」から硬質でありながらも、まるでサラウンドスピーカーがあるかの如く四方八方から取り巻くサウンドが会場全体を包む。特に圧巻だったのが最後に演奏された「ロープ」。演奏が進むにつれ音量、音圧を最大限まで高めていくのだが、不思議と耳が痛くなく心地よさが残る演奏であり「ロープ」終了時には大きな拍手と、それと同じくらいのザワザワとした空気が会場を包んだ。彼らの音のこだわりと音の快楽を追及したような至福の時間であった。
そして、この3組の他にもミライスカートやBiSHといったアイドルも武道館でワンマンライヴをするバンドも同じステージで観れるフェスがボロフェスタである。今回、色んな音楽に触れてフェスではなくライヴで観たいバンドが増えた観客は沢山いたと思う。好きなアーティストを選んで観るのではなく、様々な価値観が坩堝のように一つの空間で体感できるフェスとして、これからも末長く続いて欲しい。そして、私自信もこの文章を書きながら来年はどんなラインナップになるか妄想している。(安井 豊喜)


くるり出演で“京都でしか味わえないフェス”ここに極まれり
筆者、齢24。大阪から上京して2回目の秋が来た。しかし私は関西にいた時と変わらず、この時期になると深夜バスに乗り込み、KBSホールに足を運んでいる。通算15回目を数える京都のD.I.Yフェス、ボロフェスタが開催された。大学生を中心に100名を超えるボランティアスタッフが装飾・当日運営などを全て行う大文化祭。また今年でいうところのフラワーカンパニーズや在日ファンク、奇妙礼太郎トラベルスイング楽団などの大看板がメインステージでやる一方で、京都音楽大感謝祭とばかりに京都のライヴハウスを中心に活動する勢いあるバンドがキャパ100人程度の地下ステージを盛り上げる、この構図こそが魅力だ。またメシアと人人やAmia Calvaなどこれまで地下を沸かしてきたアクトがメインステージで演奏したり、大看板たちとタイマンを張る姿勢が楽しめるようになったのも歴史を重ねる内に確立されてきた楽しみ方だ。
本祭1日目のメインステージトップを飾ったのは名実ともに現在の京都シーンを代表するバンドになりつつあるHomecomings。「I Want You Back」を演奏する姿からはすっかりメインステージが板についてきたことを感じるが、さらに平賀さち枝を呼び込んでのコラボ曲「白い光の朝に」、またさらに隣のステージに上がってきた次の出番であるneco眠るとステージをまたいで「猫がニャ~て、犬がワンッ!」を演奏するなど、冒頭から豪華なイレギュラー光景を見せ、本イベントの申し子たるステージを見せた。
また福富優樹(G)が最後のMCで「是非京都のバンドを見てほしいです。この後地下でSuessがやって、明日はTHE FULL TEENZとかも出ますので。」と残したが、正にそれこそがボロフェスタの醍醐味だ。地下ステージを熱くした京都勢の中で特筆すべきは男女5人組バンドSATORI。初出場ながらにおもちゃを持ってきて、安い小芝居から始まるポップでゆるい空気がグっと舞台をホームに引き寄せる。突き抜けたキャッチーでグルーヴィーなサウンドといちいち笑いを挟んでくるそのステージング。毎年地下ステージの中枢を担う常連、大阪のワンダフルボーイズに押し迫るがごとくハッピーな時間にボロフェスタの層の厚さを感じさせた。
ボロフェスタでしか見られないと言えばロビーの小ステージで朝イチとトリという大役を与えられた福岡のシンガー、ボギーだろう。クリトリック・リス(今年は不出場)と共にボロフェスタのアンダーグラウンド精神を体現してきた常連であるが、今年も“奥”村靖幸として「だいすき」を完コピしたり、北島三郎「まつり」をボサノヴァアレンジにした「カーニバル」をこれまた岡村靖幸の物まねで歌うというどこまでも悪ふざけがBiSHやくるりの真裏で集まった精鋭とも言える観客を爆笑の渦に巻き込み、ボロフェスタ名物として定着した「贈る言葉」斉唱からの胴上げには感動すら覚える。
またボロフェスタのお祭り騒ぎを今回最も象徴し盛り上がりを見せたのはベテラン・フラワーカンパニーズ。長年誘いを受けながらようやくの出演となったがその中でラストの「真冬の盆踊り」では次の出番のNATURE DANGER GANGのメンバーも準備をしながら踊り出す。その様子を見たNDGを知らない鈴木圭介は風貌にびっくりしながらも“ヨサホイ”を彼らにも煽り、まさかの初対面コラボで会場を沸かせた。
しかしやはり今回最大のトピックは主催のMC土龍が「京都でイベントをやる人間にとってやっぱり一番呼びたかった人たちです」と積年の思いが叶い、大トリを務めた初出演のくるりだろう。彼らはまるでその想いを全て引き受けたかのようにどっしりとした演奏を進める。アンコールで披露した「リバー」でKBSホールバックの壮大なステンドグラスが開き、観客・ボランティアスタッフが終焉に向けそれぞれの想いを募らせている様子で、何とも言えない祭りのあとの空気が会場を満たしていた。
毎年終演後に流れるエンドロール。最後に三ツ星が掲げられ幕を閉じた。ボロフェスタスタートの02~07年まで会場だった京大西部講堂の屋根に掲げられた、あの三ツ星だ。今回最多動員数を更新し規模はどんどん大きくなっても、その原点であるD.I.Y、サプライズ精神は変わらず、ここでしか見られない風景がある。いつだってここに戻ってくると音楽で遊びほうけたかつての仲間達と遊べる。そんな思い入れを受け止めてくれる場所である。(峯 大貴)