【ライヴレビュー】リツコ “ミラーボール/弱いアイデンティティ” release party!
- By: 山本 悟士
- カテゴリー: Live Review
- Tags: リツコ


2014年11月25日 at 京都二条GROWLY
LIVE: リツコ、Francisco Xaviers、J-Seeds、Cettia(meets ピクミン.from GRIKO)、YOU MUST SEE I、AFRICA
町のサイズの割に大学が多くひしめき合う町、京都。それも影響してかバンドを始める者も多く、音楽さえあれば大学間の垣根も気兼ねなく越えられるラフさがある。また、くるりの轍を歩くように全国を見ても稀有などこかいなたいシーンが形成されている地でもある。リツコはSSWとして着実に京都での地盤を築いてきたミサト(Vo, G)がヴォーカルを務めるなどメンバーそれぞれが別の活動をしながらも結成されたガールズ・バンドだ。そんな彼女たちの初の音源のレコ発ライヴが京都は二条の住宅街にひっそりと佇む京都GROWLYで行われた。
バンドマンにとってレコ発ライヴとはやはり特別なものなのだろう。この日は彼女たちの新たな船出を祝福しようと対バン相手には以前から彼女たちと交流のある関西からの顔ぶれが多く見られた。ライヴを観ても各々が激しく主張し合うような熾烈なものではなく、一丸となってラストの彼女たちへとつなげようとエールを送っているかのように感じた。オルタナティヴの中に優しいギターの音色を共存させるFrancisco Xaviers、そしてミサトとも何度か対バン経験のあるJ-Seeds、京都発の3ピース・バンド2組が序盤から力強く勢いづけると、続くCettiaはGRIKOのピクミン(Dr)をサポート・メンバーに2人で登場。フロアに深々とおじぎをする彼女、MCで「京都でライヴをするのは2回目」だと言っていたようにアウェイな環境の中であったが、まだ高校生ながら感じたままに歌う10代だからこその研ぎ澄まされた感性でエモーショナルに歌い上げ、フロアの空気を一変させた。少し落ち着いた雰囲気の中、転換時から凄まじい音圧の打ち込みサウンドでフロアを圧迫させた元VampilliaやLOW-PASSのメンバーを含む京都発の男女4人組バンドYOU MUST SEE Iは「今日は祝いに来た」とマス・ロックの影響を受けた、まさにLOW-PASSこその技巧的ベース・ラインの上に女性3人によるキーボードを分厚く重ねることで、直接身体に訴えかけてくる肉体的なニュー・ウェーヴ・サウンドを披露した。その流れを受ける形で彼らとは対照的に脱力したシンセポップ・サウンドを聴かせたAFRICA。途中まで軽やかなリズムに乗ってハイ・トーン・ヴォイスを響かせていた鞆良磨(Vo, G, Key)だったが、一転「リツコを祝うのにその距離でいいんか!?」とマイクを片手にフロアまで降りてきて歌い、出番を次に控えたリツコにバトンをつなげようと必死な姿に関西バンドの絆の深さを見た気がして心を揺さぶられた。

5組の想いを受け止めるようにして、いよいよリツコの4人がステージ上に姿を現す。ミサトが着ていたAFRICAのTシャツは友好の証か。それに合わせて一斉に前へ詰め寄る観客。ふとフロア全体を見渡すとThe Foglandsの大橋想(Dr)など彼女たちの晴れ舞台を見届けようと多くのバンドマンが駆けつけていた。まだ結成してから日が浅い故に彼女たちのライヴを観るのはこの日が初めての者が大半であっただろう。念入りにサウンド・チェックをし終え、どんなライヴをするのかフロアでは期待が膨らむ中、「第三走者」を演奏し始める。洋楽離れが叫ばれて久しい昨今だが、彼女たちの歌から感じるのはオアシスさながらのブリット・ポップ、イギリスへの憧憬だ。流行りのBPM200超えの四つ打ちビートに踊らされることなく、90年代以降のUKロックから音楽の歴史を紐解いていくように、ただ好きな海の向こうの音楽をお互いに持ち寄りそうやって彼女たちは結成されたのであろう。バーリー・カドガンを彷彿させるセミアコを弾きながら、ミサトも4人でのバンド・サウンドに手応えをつかんだのか今までアコギ1本で弾き語ってきた「PASS!」はまっすぐな歌声により力強さを感じた。
https://www.youtube.com/watch?v=y36gReaBTS4
華々しい一日ではあるものの、この日をもってかずー(G)が脱退することがツイッターなどで知らされていた。ところが、ライヴ中にそのアナウンスはなく、かずーは切なげな表情を浮かべながらもラストの「弱いアイデンティティ」まで一音一音を噛み締めるようにギターを弾き切ってみせた。しかし、それは同時に彼女たちがここで立ち止まらずにすでに前を見据えているからこそにも思えた。アンコールで再びステージに上がるも時間も遅く曲も用意していないと演奏を終えたが、物販には彼女たちの音源を求めて長蛇の列ができていた。ほっと胸をなで下ろし、賑やかにバンドマンたちと話す彼女たちは本当に楽しそうでとっくに彼らの仲間入り。これからシーンの中で可愛がられながら成長していくことだろう。京都の愛に満ちあふれたその光景に見とれてしまい、私からも彼女たちの船出にエールを送りたくなりこうして筆を執っている。

1st DEMO
自主制作, 2014年
BUY: ライヴ物販、HOOK UP RECORDSほか