【ライヴレビュー】前へ進むために | Sadie Live Tour 2015 Never Ending Voyage
- By: 小川 あかね
- カテゴリー: Live Review
- Tags: Sadie


DECADE
Majestic Records, 2015年
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Sadie
Live Tour2015 Never Ending Voyage -We never say good bye-
2015/07/28 ZEPP NAMBA
この10年間で自分たちが生み出してきた曲たちは、聴く者にとってどういう存在になりえたか。楽しい時だけではなく、辛い時、悔しい時、その背中を押せていたのか、悲しい時、寂しい時に、寄り添える存在であったのか。そして、バンドの活動が止まった後も、自分たちの曲がファンとともに生きていけるのか。この日彼らは、そういうことを必死で確かめているみたいだった。
Sadieが活動を休止する。2005年に真緒(Vo)、剣(G)、美月(G)、亜季(B)、景(Dr)の5人で結成し、大阪を拠点に活動を続けてきたヴィジュアル系バンドSadieは、今年10周年のアニバーサリーイヤーを迎えた。そんな彼らが、9月21日ZEPP TOKYOでのライヴをもってバンドとしての歩みをとめるというのだ。このショッキングなニュースが発表されてから早3ヵ月。今夜ここZEPP NAMBAで彼らは、6月から開始したライヴ・ツアーのファイナル公演を行う。そしてそれは同時に、彼らのホームである大阪での活動休止前ラスト・ライヴでもある(ファンクラブ限定ライヴを除く)。Sadieにとって初めてのZEPPでのワンマン。満員とまではいかないが、フロアには多くのファンが詰めかけていた。
活動休止が決まっていることもあり、この10年間の総括と、バンドがファンにひたすら感謝を伝えるようなステージを想像していたのだが、この日貫かれていた空気感はむしろ、バンドがファンから背中を押されているような光景の数々だった。例えば、エレクトロダンスナンバー「HOWLING」では大勢が頭を振り、その様子を目に焼き付けるように見つめるメンバーの姿が印象的だったし、シンガロングが起きた「THE NEVER」では「もっともっと」と、真緒と美月がしつこいくらいに煽っていた。そしてファンも声を張り上げて歌い、彼らの思いに応える。今ここで直接気持ちを言葉で伝えることができないファンが、共に歌うことで、バンドにエールを送っているみたいだった。そして、冒頭で述べたように、メンバーはそういうファンの反応見ながら、自分たちの音楽が届いているという実感を得たことだろう。
それにしても、なんで大阪のバンドなのに東京でラスト・ライヴをするのかが疑問だったのだけど、それは最後の真緒のMCを聞いて腑に落ちた。「Sadie、東京にいます」どことなく不安げに真緒はそう話した。上京しているのだ。もちろん、慣れ親しんだ大阪を離れる決心は簡単にくだせる決断ではない。しかもバンドの活動も止まる。それでも何かを変えなければいけない、前へ進まなければならないという意識が彼らをそうさせたのかもしれない。だからおそらく9月21日のラスト・ライヴは、「自分たちはもうすでに次へ進んでいる」という彼らなりの決意とメッセージであり、この地(=東京)でそれぞれが新たなスタートを切るという意味があるのだろう。
アンコール、ラストにプレイされたのは、初期からの代表曲である「迷彩」と「陽炎」だった。近年のSadieはメタル・コアを基軸にエレクトロを取り入れたり、シンフォニックなアレンジにチャレンジしたりと、表現の幅を広げていたが、その根幹には歌心を感じさせるメロディアスな旋律があった。「迷彩」と「陽炎」はまさにヘヴィさと、叙情的なメロディというSadieの持ち味が堪能できる曲である。幾度となくライヴでプレイされてきたこの2曲。いつもなら大団円を迎える場面で、フロアのあちらこちらからすすり泣く声が聞こえた。周りを見ると、涙を流しながらもじっとステージを見つめていたり、最後まで見届けようと涙をぬぐって前へ向き直るファンたち。そんな姿に、真緒は「一生懸命生きてください」と叫んだ。その言葉は、自分たちに言いきかせているようでもあり、まるで、次に再会するまでのファンとの約束のようだった。
◆小川あかね
セーラームーン&SPEED世代。ヴィジュアル系村の住人。ガンダムはシャア派。モビルスーツはシナンジュ。好きなタイプは空条承太郎。声優沼に腰くらいまで浸かってます。
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Twitter:@akam00n