ONE BY ONE RECORDS presents「IF I FELL」ナードマグネット『この恋は呪い』リリースツアー: at 名古屋鶴舞K.Djapon: sukida dramas
- By: 森 豊和
- カテゴリー: Live Review
- Tags: sukida dramas


ONE BY ONE RECORDS presents「IF I FELL」ナードマグネット『この恋は呪い』リリースツアー
at 名古屋鶴舞K.Djapon
ナードマグネット, sukida dramas, 竹内サティフォ, Harf moon spiral
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良くも悪くもメインストリームのロックから野生味が抜け落ちて久しい。個人的にそう思う。ヴァンパイア・ウィークエンドが切実に「明日死ぬか生きるか」と叫ぶか? そんな昨今、リヴァプールのサーカ・ウェイブスと呼応するかのように名古屋から飛び出した5人組sukida dramasに私は注目している。焦燥感あふれるアフロ・ビートに、陽気なラテン風アンサンブル、様々な時代、地域の色を折衷した音楽性はまさにポスト・パンクだ。
ライヴ前に屋根裏スペースに座るヴォーカル。梯子の下から呼びかける仲間に微笑む様子はまるでサルだ。それもとびきり賢いゴリラ。ハポンという場所を愛している。1曲目「Kansas」のコーラスで魔法をかける。会場を森に見立てて動物たちに呼びかける。トロピカルで美味しいギター・フレーズ。喜納昌吉を連想させるリズム隊。続いて「あいさつが一番大事!」と叫んで「Fish & Chips」。まるでビートルズの「ハロー・グッドバイ」に対する50年近い時を経たアンサー・ソングだ。やがて来る別れ、コミュニケーションの齟齬を、力技と軽快なジョーク、そして煽るハンド・クラップでぶち破ろうとする。ライヴ半ばでMC。「キーボードのエイリアン(というあだ名)は故郷の惑星に用事で帰りました! だからいません」。
キーボード不在の苦境でもユーモアを忘れない。逆に彼らのスピリッツに火を付けたようだ。「Teddy Boy」でリンリン鳴るギターは、歌詞に出てくる、困難に負けまいとあがく虫の鳴き声だと今更気づいた。方法論は違うが彼らの表現はデビュー時のBUMP OF CHICKENを彷彿とさせる。ロカビリー風味の「Harvest Home」、カントリーな「Billows」といった新曲も交え、ラストの「ゴリラ」では、ホイッスルを響かせ手持ちの打楽器を打ち鳴らし観客を巻き込み大合唱。《世界で一番ここが楽しいだろう?》と森へ導く彼らから私は文明社会に対する批評性を強烈に感じた。


2014年7月6日
名古屋鶴舞K.Djapon