asayake no ato: 追想と未来
- By: 佐藤 ワカナ
- カテゴリー: Disc Review
- Tags: asayake no ato


追想と未来(TOWER RECORDS 限定)
FURTHER PLATONIC, 2014年
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淡々とした彼らの演奏には、しかし静かな初期衝動が感じられる。別のバンド目当てで足を運んだライヴハウスで初めて彼らを観た時に、私はステージから目をそらせなくなった。
asayake no atoは、2011年結成の京都発4ピースロック・バンド。今作『追想と未来』で全国流通を果たした。1曲目はシングルのリード曲であり、過去のデモ音源でも何度か収録されている「追想と未来」。ギターの残響音が響いたかと思えば、余韻を感じる前に性急なドラムロールが楽曲の始まりを告げる。タイトルが示す二面性を表現するかのように、叙情的な音が緩急鮮やかにリフレインする。サビでは、神社宏行(Vo, G)の力強くも優しい高音が、掻き鳴らされるメロディとはまるで別次元のものであるかのように響く。
タイトルに使われている“追想”は、過去を思い出してしのぶという意味だ。神社は“追想の果てへ 目が覚めなければいい 想像に任せて”と歌う。追想の中に足を止め、未来を描くことを放棄したのだと。過去に捉われる一種の葛藤を描いているようだ。続く2曲目に収録されているのは「秘密」。1曲目とはガラリと雰囲気を変えて、神社の歌声で始まるミドル・テンポの優しい音が鳴る。シンプルな楽曲構成だが、随所で聞こえてくる神社の裏声が、美しいメロディをより一層引き立たせているのが印象的だ。そして、優しさを感じる日常的な言葉の中にも、どこか不安気な部分が垣間見える世界観がみえる。一聴すると1曲目と対曲のように思えるが、美しい旋律の中に見え隠れする負の感情を描き出すという部分では、共通するものを感じる。
http://youtu.be/dDboU7O-N1E
彼らは派手で力強いパフォーマンスの対極にあるようなバンドだ。だからこそ、渦巻く不安や様々なモノに対する葛藤を繊細に描き出すことが出来るのだと思う。まさに今作は、美しい旋律に隠しこまれたナイフがきらりと光るような一枚と言えよう。11月5日には1stミニ・アルバム『Memories』のリリースも決まっている彼ら。いま、知っておくべきバンドであることは間違いない。

Memories
FURTHER PLATONIC, 2014年
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