BOOTS: WinterSpringSummerFall

Boots: WinterSpringSummerFall
Disc Review
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Boots: WinterSpringSummerFall
BOOTS
WinterSpringSummerFall
自主制作, 2014年
DOWNLOAD: SoundCloud

2013年暮れ、突如リリースされたビヨンセの5作目『ビヨンセ』は、彼女の復活を高らかに告げセールスと批評の両面で大絶賛を浴びた。そのプロデューサーとして作品に深く関わった影の立役者が本稿で紹介するBootsことJordan Asherである。彼はこれまでいくつかの音楽活動をしてきたが無名であった。しかし、昨年突如BootsとしてRocnationと契約。その後EP「Dust」をフリーで公開、本作はその収録曲を含む全16曲で構成された彼の1stアルバムである。

本作を聴いて驚くのは、楽曲のバリエーションである。オープニングトラック「A Day In The Life Of Jordan Asher」ではヒップホップを、「Fade Away」ではチルウェイヴをも思わせる浮遊感のあるダンスチューンを披露。「No More」ではカタカタと裏で鳴り続けるスネアドラムはトラップであるし、憂いのあるドリームポップな「EST」、シンガーソングライター顔負けの弾き語りを披露する「Atom」、「Ride Ride Ride」では見事なファルセット・ヴォイスを披露している。

次々と曲調を変えていくので寄せ集め作品のように感じるかもしれない。しかし、アルバム全体を通してノスタルジーがキーワードになっており、曲調の変化が物語を進行させている。その肝となっているのがiPhoneで録音された留守番電話を始めとした彼の生活音だろう。それにより、アルバムに一貫性が生まれ聴き手はドラマを見ているような感覚になる。

そんな本作を象徴しているのが「Dust」と「Dreams」のギャップだ。2曲目の「Dust」では、喘ぎ声を重ねることでビートを構築するセックスビートで肉体性を表現。それに対してビヨンセを迎え本作のラストを飾る「Dreams」では、直接的な手法ではなく2人の掛け合いによってうっとりする程の世界観を築き上げるR&Bとなっている。どちらも聞き手の耳を即座に捉えるが、前者がイロモノ的なキャッチーさに対して、後者は正統派R&Bのそれである。素性をあまり語らない20歳の青年が作る音には、街のネオンをただ眺めている感覚がある。それをして何があるわけでもないが、ただ落ち着くのだ。

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