【レビュー】ポスト・パンクからディスコ・ファンクへの変化 | ギャング・オブ・フォー『ハード』

Gang of Four『Hard/Solid Gold』
Disc Review
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Gang of Four『Hard/Solid Gold』
Gang of Four
Hard/Solid Gold
Wounded Bird Records, 2003年
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デビュー後に発表された『エンターテイメント!』はソリッドなカッティング・ギターとポリティカルな歌詞が話題となり、リーズ大学出身にも関わらずNYパンクバンドと勘違いされることもしばしばだったギャング・オブ・フォー。ダンサブルでパンキッシュなサウンドはザ・ラプチャーやフランツ・フェルディナンドなどから、直接的な影響はないものの、今流行りの国内四つ打ち系若手バンドの源流だったと言い切ってもよいだろう。

その後2枚のアルバムを発表し、解散前の1983年にリリースした『ハード』は、バンド史上最も人気のない作品なのである。あまりにも人気が無さ過ぎて、2nd『ソリッド・ゴールド』とこのアルバムは『HARD/SOLID GOLD』として1枚にリイシューされてしまった。なんたる悲しい結末(ピッチフォーク・メディアでは10点満点中3.8を叩き出すなど、評論家からも酷評!)。いやいや、ちょっと待てよ、と。確かに硬質でいてエッジィな楽曲は少なくなったかもしれないが、今聴くと評価しないのは勿体無いほど、隅々まで作りこまれているアルバムなのである。うむ、1st聴いて「ポスト・パンク最高!」と唸っている場合ではないぞ。今聴くならディスコ・ファンクの『ハード』だ!

ソウル・フィーリング溢れる冒頭の「Is It Love」からぶっ飛んでいる。黒人女性をバッキング・ヴォーカルとして迎え、フェミニンな雰囲気を漂わせつつ、よりディスコティックにアプローチ。シンセサイザーを取り入れたこともあって、1stにはない奥行きを出すことに成功。アンディ・ギルのギターは、これまでのものよりもファンキーに、そして軽く跳ねるようなカッティングに変化。

そしてデイヴ・アレンの成長に驚きを隠せないだろう。パーラメントも真っ青な、間を意識したリズミックで勢いのあるベーシストに生まれ変わっているからだ。このアプローチはプリンスの81年作『戦慄の貴公子』をはじめとした、当時のブラック・ミュージックによる影響を少なからず受けていたからだろう。作品の全面でアップライトに弾きまくっているが、初期のギターからベースに核を置いていることがはっきりと分かる。

これまでのサウンドの延長線上とも言えるハード・ナンバー「I Fled」や「A Piece of My Heart」、ニュー・ウェーブ・ポップな「Silver Lining」や「Arabic」など、小粒揃いな作品であるが、一貫しているのは中性的であるということ。ジョン・キングはファルセット・ボイスや高音域でのメロディ作りを意識しているように思うし、前述した通り、女性コーラスも至るところで登場する。初期の最小限での音楽作りとは違い、大所帯でバンドをやってみたかったようにも思える(ファンクも基本的に人数の多い音楽だから)。

メンバーの技術も向上し、より選択肢が増えたことで、実験したかったことを全て実現したアルバムではないだろうか。そんなことを考えながら最小限で制作した1stを聴くと、『ハード』の面白さに気づくことができるはずだ。

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