Gotch: Can’t Be Forever Young
- By: 稲垣 有希
- カテゴリー: Disc Review
- Tags: ASIAN KUNG-FU GENERATION, Gotch, Turntable Films, ストレイテナー


Can’t Be Forever Young
only in dreams, 2014年
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例えるなら、フォトモザイクのような作品だ。遠くから見ると1枚の絵だが、近寄って見てみると小さな写真が何枚も集まって一つの大きなアートを作り上げている。今作においてのピースは、日常を切り取ったような歌詞に表情豊かな登場人物。多彩なゲストミュージシャンたち。皮肉、恋、執着。これらが集まって浮き立たせるのは、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文。そして「死」という最大のテーマだ。
ラフなタッチで託すような歌詞にゴッチの新しい挑戦を感じる。チャーミングな情けなさを持った登場人物に思わず親近感。ホリエアツシが参加したM-8「Great Escape from Reality/偉大なる逃避行」では、ポエトリー・リーディングとエレクトロ・ミュージックの相性の良さを証明した。M-5の「Stray Cats in the Rain/野良猫たちは雨の中」にUSカントリーの風をもたらしたTurntable Filmsの井上陽介は M-11「A Girl in Love/恋する乙女」のアウトロでも胸を締め付けるほどにドラマチックなギターを展開させる。まさに適材適所といったアーティストにオファーを出している点には、ゴッチのプロデューサーとしての嗅覚が働いている。
既発曲がこのアルバムの中だと更に説得力のある響き方をして興味深い。特にM-12「Lost/喪失」の”まるで僕らは初めから全てを失うために生まれたみたいだな”という歌詞も、今作の刹那的要素としての恋を描いた曲と並ぶことで、逆に生命力を感じさせる。
即効性はなくとも、リスナーの心の中で生き続けるアルバムだ。日替わりで消費される昨今の音楽シーンに対するゴッチからの解答ともとれる。もしかすると、現代に生きる私たちもこの作品を創るピースのひとつなのかもしれない。つまり、あなたが今作が表現する「死」に気づいて「生」を意識したとき、この作品は完成するのだ。