本日休演『本日休演』
- By: 峯 大貴
- カテゴリー: Disc Review
- Tags: 本日休演


本日休演
ミロクレコーズ, 2014年
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京都の音楽が盛り上がる要因として日本一大学生がいる街であるということも大きいが、ついに西日本で最も「かしこ」が集まる京都大学からも新たな才能が登場。故・どんとも所属していた軽音楽部に現役生として籍を置くそのバンドが本日休演である。初音源となる自主制作による本作ではオタク的に様々な音楽を抱擁した音色・メロディに加えて、クレバーなニヒリズムによるユーモア、そしてなにより60年代のフォーク・ブルース文化に始まり連綿と続く京都音楽の風を感じるのである。
マーヴィン・ゲイ「What’s Going On」の世界観を引き継ぐへなちょこフリーソウル「ごめんよのうた」、たまやローザルクセンブルグなどを彷彿とする童謡フォーク・サイケロック「とびはねるだけのばった」・「映画」などの完成度はさることながら、アルバムの冒頭をシタールで飾る45秒ほどの「本日休演」(アルバム最後にも同名曲)や実際に武道館で録音したミニコント「本日休演 Live at 武道館」など小ネタも挟める器用さでもって構成でも聴かせる。
不思議なのは「懺悔」、「用済み」、「ごめん」、「ほおっておいてくれ」と容赦なく悲観的な歌詞が飛び出すが楽観的な大衆音楽のスタンスを崩していないことだ。それは主な録音場所である京大吉田寮でわいわい煮詰めながら生まれたアレンジの妙だろう。ノイジーなガレージロック「たましいの置き場所」のお経でフェードアウトなんてザ・フォーク・クルセダーズ「帰ってきたヨッパライ」以来ではなかろうか。その他の曲も突然現れる混沌としたノイズ・野次・祭囃子などウィットに富んだ茶化し方に溢れ、かつ京都の土着・民族的なものが根っこにある本作は、同じ土地から飛び出し46年前に生まれた名盤『紀元貳阡年』の現代版ともいえるだろう。
歌詞カードの裏には鴨川を一列になって飛び石づたいで渡るメンバー5人(本作発売後ドラマーが抜け現在は4人)、アビーロード京都ver。この青臭くもクレバーなセンスを持つ彼らはフォークル~ボ・ガンボス~くるりという京都の王道系譜の延長線上に確実にいる。