金 佑龍: ナイトクルージング
- By: 安井 豊喜
- カテゴリー: Disc Review
- Tags: 金佑龍


ナイトクルージング
Flake Sounds, 2014年
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カットマン・ブーチェを解散後、精力的に活動を続けている金 佑龍(キム ウリョン)が12インチ・アナログ(同内容のCD付き)でミニアルバム『ナイトクルージング』をリリースした。既出曲を含むが、注目すべきは彼のライヴで定番のナンバーであり、タイトルにもなったフィッシュマンズのカヴァー「ナイトクルージング」である。
金 佑龍といえばジャズ、ソウル、カントリーの要素を含んだ楽曲が持ち味だが、今回はそれを廃して原曲に忠実な形でカヴァーを行っている。しかし、序盤から声にフィルターをかけて原曲の持つ神秘感をより高め、後半にフィルターをとりエモーショナルに歌いあげドラマチックな構成になっている点など、原曲にない工夫も感じられる。さて、私はこの作品を聴き、佐藤伸治がそこで歌っているかのように錯覚した。まるでお互いの魂が深いレベルで共鳴している、そんな感覚を受けた。

空中キャンプ
ポリドール, 1996年
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以前、金 佑龍はインタビューで“この曲に救われた。上京し、これからという時にバンドが解散。そして、3.11の地震があり気持ち的に凄く落ち込んでいたが、この曲を聴いて心に触れられた感じになり、思わず泣き出した。それから少し体が楽になり、音楽活動をやり始めた。”と語っている。「ナイトクルージング」が発売されたのは1995年。日本は阪神淡路大震災、地下鉄サリン事件といった未曾有な事態が起こり、フィッシュマンズもレーベルの移籍やメンバーの脱退という事が起こった年であった。もしかしたら、佐藤伸治もこの時の金 佑龍と同じ心境で、この曲を通して時代を越えシンクロしたのではないだろうか。この曲はカヴァーの許可をフィッシュマンズのメンバーに申し出て快諾されたのだが、その姿にメンバーたちは佐藤伸治の面影を見たかもしれない。
33歳で佐藤伸治はこの世を去ったが、今年33歳になる金 佑龍は「ナイトクルージング」で新たなる一歩を踏み出す。この曲は彼と佐藤伸治との魂の共鳴で出来た作品であり、新たなる船出を祝う汽笛である。