キュウソネコカミ: チェンジ ザ ワールド
- By: 山本 悟士
- カテゴリー: Disc Review
- Tags: キュウソネコカミ


チェンジ ザ ワールド
ビクターエンタテインメント, 2014年
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どんな反応をするのが正しいのだろう。清々しいまでに堂々と「ウィーアーインディーズバンド!!」と宣言し、インディーズ感丸出しに日常の愚痴や批判、言葉にすることさえ憚られるようなことまで、全部ひっくるめて負という負を歌ってきたキュウソネコカミ。思わず笑ってしまうその人間臭さがたまらない彼らのメジャーデビューに私は戸惑った。しかし、聴こえてきた第一声に安心した。メジャーとかそんなのどうでもいい。キュウソはキュウソだ!
とは言ったものの本作はどこか、らしくない。だからと言って変わったわけでもない。顕著なのがクランチに歪んだニヒルなギターで始まるM6「何も無い休日」である。耳障りの良いキャッチーな8ビートにASIAN KUNG-FU GENERATIONを想起せずにいられなかった。マイナーコードを多用したコード進行に繰り返される“わぁーってなって不安定”という歌詞。“何かしないと 何かしないとな”とやる気を出したかと思えば、ラストで痛快に裏切ってくる後味の悪さはさすがはキュウソ。
なるほど、誤解していた。キーボード中心にダンサブルに展開するだけがキュウソではない。本作は視野を広げることで、キュウソの全貌が見え始めた一枚なのである。ネオ・スピリチュアルな歌詞と盆踊りのリズムの組み合わせが不思議としっくりくるM7「KMDT25」。ノンストップ中二病ソングM4「スベテヨシゼンカナヤバジュモン」。ファンクにミクスチャー・ロック、エッジの効いたギターをきっかけに転調していくあざとさに高揚感。予期せぬワウペダルを踏みまくるギターソロに理性は崩壊。本作ではキーボードはあくまで飛び道具、前線にいるのは2本のギター。キュウソの多彩な戦術にただただ脱帽である。
なぜメジャーなのか。それはきっと支えてくれるファンに自分たちから会いに行きたかったからであろう。キュウソはいつだってインディーズバンド、決して「ウィーアーメジャーバンド!!」とは歌わない。