LOSTAGE: Guitar
- By: 森 豊和
- カテゴリー: Disc Review
- Tags: LOSTAGE


Guitar
THROAT RECORDS, 2014年
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疾走感溢れるストレートなパンク・ナンバー「いいこと/離別」で、しかし彼らは自らを年老いた犬に例える。30代も半ばにさしかかり、かつての戦友も一人、また一人姿を消す。音楽不況も叫ばれて久しい。90年代以降のUSオルタナティヴに影響を受けた奈良のロック・バンドLOSTAGEが本作で扱う主要なテーマは喪失だ。2012年より地元でレコード店『THROAT RECORDS』を始めた彼らはそんな状況でも“多分さ いいことあるぜ”と歌い、望むことひとつさえあればいいと続ける。
人生の様々な分岐を扱う「Boy/交差点」では野良猫の独り言とくる。淡々とした曲調で語られる“最悪のラストシーン”、“夢のない話”とはなんだろう。東京の音楽ビジネスの現実? 偉大な先達の死? 傍観者達は笑い、つられて彼も笑う。本当に哀しいとき人はなぜか笑ってしまう。ストレスから脳を守るための防御反応、“空笑”。果てしない哀しみを空気抜き、脳みそが膨脹して頭蓋骨が破裂してしまわないように。タイトル曲「Guitar/アンテナ」で鳴らされる不穏なリフから一気に爆発するグランジ・サウンドはそういった光景をより直接的に鳴らしている。そしてMVにもなった「Flowers/路傍の花」で浮き彫りになるのは歌の強さ、Throat(喉)からほとばしる生命力だ。ギターと喉、それさえあればいい。そして地元の仲間だってまだ残ってる。ギター・キッズだっているはずだ。
歌詞を聴けば、中原中也の詩からの引用に涙ぐみ、ザ・ブルーハーツを連想するフレーズに思わず顔がほころぶ。悪ガキ同士のアイ・コンタクトみたいだ。一方、本作ラストの「Good Luck/美しき敗北者達」の歌詞はbloodthirsty butchers「サラバ世界君主」同様、両義的で深い。人は皆いつか敗北する。しかし負け方にこそ意味がある。大きな悲しみや混乱を一点突破するために、彼らはあらん限りの力で演奏し歌う。必死に、懸命に。