少年ナイフ: 嵐のオーバードライブ
- By: 光吉 香奈子
- カテゴリー: Disc Review
- Tags: 少年ナイフ


嵐のオーバードライブ
P-VINE, 2014年
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少年ナイフは結成33年を迎えるバンドだ。オリジナルメンバーのなおこ(Vo,G,etc.)を中心に、現在のメンバーはりつこ(Ba,Vo)、えみ(Dr,Vo)の3人で日本はもとより海外での活動も多い。世界で一番有名な日本のバンドとも言われている。
彼女たちの魅力は、キャッチーなメロディーと分かりやすく独特のゆるい歌詞にあると思う。世の中難しい事が多いけれど、彼女たちの音楽を聴いているとそんな事を忘れて楽しい時間に浸ることができる。ただ、音楽をしている人も人の子。生きていると好きなものも、やっている音楽の嗜好も変化するものだ。しかし、少年ナイフの音楽は、良い意味で昔から一貫していて、今聴いても古さを感じることはない。歌詞も自分が感じたままに素直に表現しているように思う。自分をこう見せたいとかそういった類のものを一切感じさせないし、強いメッセージが込められているわけでもない。だから楽しく聴けるのではないかと思う。
さてそんな彼女たちの2年ぶりのアルバムが『嵐のオーバードライブ』だ。70年代のロックを基調としていて、今までよりも重厚な印象を受ける。M2「Black Crow」やM8「Green Tea」などは、ゴリゴリのハードロック調だ。しかし、全体を通して少年ナイフらしさは健在だ。「Green Tea」は、音の印象に反してグリーンティーが好き! という歌詞である。このメロディにこの歌詞を載せるところが少年ナイフらしさと言える。M7「Like a Cat」の歌詞の中で“終わったことは気にしない 未来のことなど心配しない”とある通り、その独特なゆるさが魅力であると先に述べたが、それだけではない芯の通った姿勢を見ることができる。
好きな事を楽しみながら続ける事は、思いのほか大変である。彼女たちもメンバー脱退などを乗り越えて、長く活動を続けているように思うのだが、どの作品を聴いてもその大変さは微塵も感じられない。本人たちは本当に楽しんでしているだけかもしれないが、生みの苦しみをどこかに見出したくなる一般人の感覚を持ってしていうならば、辛くても笑ってみせるような力強さ、かっこよさを本作から感じることができる。