ソウル・フラワー・ユニオン: UNDERGROUND RAILROAD
- By: 峯 大貴
- カテゴリー: Disc Review
- Tags: ソウル・フラワー・ユニオン


UNDERGROUND RAILROAD
ブレスト音楽出版, 2014年
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震災を挟んで4年ぶりのフルアルバム、中川敬(Vo, G)がいうところの“第2期”の幕開けを告げる本作。長らくバンドを彩ったモモナシ(JIGEN・上村美保子)の2人が脱退し、阿部光一郎(Ba)の加入とオリジナルメンバーうつみようこ(Vo)のサポートを得て、よりマッチョにリフレッシュされている。しかし結成20周年を超え、これまで幾度となくメンバー交代を経てきたはずだ。今「第2期」という言葉を使うのは、社会の変化と自身の生活をイコールにし、歌にリアルを閉じ込めてきた中川敬がソウル・フラワー・ユニオン(以下、SFU)として表現する音楽を完璧に明確化するという宣言のようだ。
2011年以降ソロ活動(自称新人フォーク歌手)やリクオとのコラボにより、アウトプット形態が一つ増えた。それもあって本隊としての本作ではソウル・モッズ・サイケデリック・パンクといった中川敬にとっての根本であり、ニューエスト・モデルからSFUへの移行期(90年代前半)を彷彿とするルーツ・ロックが久々に全面的に押し出されている筋肉質なものとなっている。加えて近年積極的に取り入れていたレゲエ・ダブ・歌謡曲要素を抱擁し“全曲オハコ”ともいえる大衆性がある。
このルーツに立ち返る感覚はニューエスト時代と同じく社会に対する怒りが向けられていることも大きい。しかしかつての頭でっかちな思想性ともとれる直接的な怒りはなく、本作では長尺サイケロック「グラウンド・ゼロ」でうつみようこによる“Anger is an energy!”の雄叫びや先行シングル「踊れ! 踊らされる前に」にあるような市井の力を信じ鼓舞するもの、また榎本健一のカバー「これが自由というものか」のように大衆芸能として怒りを昇華しているものとなっており、表現する音楽の幅が広がっていることを感じさせる。
“4人編成のロック・バンドでは成し得なかった伸縮自在で柔軟な形態のユニット”、“「尊重すべき個人」が集まった「自決の表現」を続ける”、彼らが93年の結成にあたって出した宣言文の一部だ。ずっとこの文をクレドとしていたが、本作は他の活動もあるがゆえにSFUとしてのやるべきことに対して自覚的となり、自身のルーツを見つめ直しながらもキャリア(年季と言った方がしっくりくるか)で軽々と圧倒する、これまででこの文を最も完璧に示しているアルバムではないだろうか。リリースごとに最高傑作を更新してきた彼らにとっての「第2期」。“20年経ってようやく調子つかめてきたで”と言わんばかりの凄みを感じる。