SZA: Z
- By: 杉山 慧
- カテゴリー: Disc Review
- Tags: SZA


Z
Top Dawg Entertainment, 2014年
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いまヒップホップシーン最大のアイコンとも言われるケンドリック・ラマー擁するTop Dawg Entertaiment。快進撃を続けるレーベルが初めて契約した女性アクトでありシンガーがSZAだ。米メディアComplexが今年の注目新人に選出するなど、その注目度は高い。そんな彼女が磐石の後ろ盾を得て発表した1stアルバムが本作だ。
まず目に付くのが共演陣である。Chance The Rapper、Isaiah Rased、そしてケンドリック・ラマーとヒップホップシーンで注目を集めているまさに“旬”な3人が顔を揃えたことだ。Chance The Rapperを迎えた「Childs Play」では、XXYYXX「About You」がサンプリングされている。そのダウナーなビートと二人の掛け合いが頭を駆け巡り、こちらを物思いに更けさせる。続く「Julia」では一転、メリハリのあるダンストラックになっており視界が一気に開けるが、Isaiah Rashadを迎えた「Warm Winds」では再び瞼が“とろん”としてしまうメランコリックなナンバーになっている。だが続く「HiiiJack」の細やかなビートと芯のある歌声に、再び気分の高揚を感じる。このように本作は、浮き沈みを繰り替えしながら進んでいく。
そんな本作の浮き沈みのハイライトとなるのが、「Babylon」と「Sweet November」である。前者では、Burial以降と言える嘆きにも聴こえる甲高い声をバックに、彼女の救いを請うかのような声からの始まりといい、その憂いのある歌声は新世代のDIVAたる由縁を遺憾なく発揮している。しかし、バラード一辺倒ではなく、そこにゲスト参加しているケンドリック・ラマーがアクセントとなっている。彼の代名詞であるストップモーションを交えたリリックの速射は、リスナーのMっ気をくすぐり、スムーズには流れないビートに寄り添い放たれる様は圧巻だ。続く後者の「Sweet November」では、これまた一転、生バンドを使い本作で最も洒脱でスムーズに踊れるオーソドックスなソウル/R&Bな楽曲となっている。ドラムとベースを中心に構築されるグルーヴィーなサウンド。そして合間に吐息のようなエコー処理が施された彼女の声に僕らの耳は甘い感覚に満たされる。ずっと、この甘い感覚に浸っていたい、そんなことを思わせてくれる一枚だ。