アニメーションズ: THE ANIMATIONS – 2014年リマスター盤 CD & LP
- By: 白原 美佳
- カテゴリー: Disc Review
- Tags: アニメーションズ, 奇妙礼太郎


THE ANIMATIONS リマスター盤
ROSE RECORDS, 2014年
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ロックンロールの何たるかを理解していなくても、これさえ聴いていればオールオッケーなんじゃないかとアニメーションズを聴く度に思う。大体、素晴らしい音楽に出会う瞬間は恋に落ちるそれと同じであるが、このバンドにしたってもどこがいいと聞かれても「好きになったからしょうがない」と口をつく。
2005年のファースト・アルバムがリマスター盤で再発した。M1「音楽を止めないで」の生島良太郎のギターは何度再生してもドキっとするし、ハンドマイクを片手に魂を絞り出すように唄う奇妙礼太郎のヴォーカルは、マディー・ウォーターズやリトル・リチャードにも匹敵するのではないかとゾっとする。まだ無名の彼らのライヴを、曽我部恵一が偶然大阪で目撃したのが始まり。そのストーリーさえも運命的で、聴く程にとんでもなく無敵の1枚だと思い知らされる。
周囲の期待に応えずに「やりたい音楽だけをやりたい時にやる」ひねくれた活動だったが、それこそ最良のロックバンドの在り方だ(あ、そんな彼らの態度に惚れていたのか。やっと腑に落ちた!)。しかしアニメーションズの全国流通の作品は、2012年の復活ライヴ盤を除くとこの1枚だけ。その信念を貫くのは時に困難だったのかもしれない。今や、奇妙はソロやトラベルスイング楽団、天才バンドの活動が全国でも認知されているが、アニメーションズの楽曲を唄い、時折MCでメンバーの話題を出すことから、直接的には言及はないが奇妙とアニメーションズの切っても切れない関係が伝わってくる。現在の年間200本を越えるライヴ活動が、彼なりに当時のリスナーの期待に応え、メンバーに対する心意気のように感じる。
ここにきて9年越しのファーストの再発の意味は、rose recordsの10周年記念と、今年で初版が完売した事実に加え、今でもアニメーションズを待つ声に応えようと重い腰をあげたように見える。新曲の制作は皆目なさそうだが、思い出にするにはまだ早い。ふらりとライブハウスに現れて、相変わらずに合いの手ややじを飛ばされながら、笑いながらやるくらいがちょうどいい。そんな関西の愛すべきロックバンドで居ようという声明と捉えたい。