【レビュー】25年前の原作を現在に繋ぐための主題歌 | tofubeats『ふめつのこころ』
- By: 杉山 慧
- カテゴリー: Disc Review
- Tags: tofubeats, 乃木坂46, 西野七瀬


ふめつのこころ
ワーナーミュージック・ジャパン,2018年2月16日
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この曲は、tofubeatsが劇伴も務めるテレビ東京系で放送中のドラマ『電影少女-Video Girl AI 2018-』の主題歌である。このドラマの原作は、週刊少年ジャンプに89年~92年の間に掲載されていた桂正和『電影少女』だ。あらすじを簡単に説明すると90年代初頭に作られていただけあり、VHSをテレビで再生するとAIと思われる少女“天野あい”が出てくるというSFラブコメディだ。ちなみに今回のドラマ版は2018とタイトルにも付いているように舞台は現代になっており、乃木坂46の西野七瀬が天野あいを演じている。
この楽曲は、ドラマ内でも使われることから歌詞やサウンドが25年前を思わせるようなオマージュが随所に散りばめられている。例えば、テレビがまだアナログ放送の時代にスノーノイズを表すスラングであった“砂嵐”が歌詞に使われている。これは、劇中の天野あいがテレビから出てくる時に発生したバグとも掛けられているのではないか。ダイヤルアップ音を思わせる電子音は、電話回線を使ってインターネット回線に接続していた時代を思い起させる。DJがブレイクを作るために用いるスクラッチ音は、ビデオテープの巻き戻しのテープ音であるし、さらにその部分の歌詞もドラマ内の行きつ戻りつの恋愛模様とも掛けられ、ドラマのセリフまで歌い込まれている。これらのチップチューン的なサウンドを、情報過多の現代らしい音数の多いダンスミュージックとして昇華しているフューチャーベースに乗せることで、90年代初頭のメディアの音を取り入れながらもAIロボットという近未来感も内包した楽曲に仕上がっている。
この楽曲は劇中のために西野七瀬バージョンも制作されており※ 、ハモリ部分の高揚感やストレートな歌詞も相まって、魅力的な一曲になっている。彼女の声により王道ポップスの魅力がありながら、2/17京都メトロでの彼のDJでは「ふめつのこころ」から「BIG SHOUT IT OUT」へと繋げるなどダンスミュージックとしてもライブ映えする新たなアンセムだ。実は、なーちゃん×トーフさんのコラボは私の願望の一つだった。それを書き散らした2年前のコラム「もしも、tofubeatsが乃木坂46をプロデュースしたら。」もぜひご一読を。
※10月3日発売予定の土曜ドラマ24『電影少女-VIDEO GIRL AI 2018-』Blu-ray BOX&DVD BOXには収録されず、現在、楽曲単体でのCDや音源配信の予定もありません。