ウワノソラ『ウワノソラ』

ウワノソラ
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ウワノソラ
ウワノソラ
ウワノソラ
Happiness Records, 2014年
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“1980年代のジャパニーズ・ポップスの再来。”

四半世紀を超えて、逸材が現れた。彼らの同世代、tofubeatsやラブリーサマーちゃん、Shiggy Jr.といった、その匂いのする若手注目株は既出している。しかしウワノソラはその「踊れるポップス」のカテゴリーからも(良い意味で)浮いていて、ネット世代と逆走するかのように、もっと純粋にポップスの根底から踏襲しようと始まったバンドではないだろうか。

大学時代に関西出身のどこにでもいそうな男女3人が結成。あっぷるぱいや流線、杉瀬陽子らを手掛けたハピネスレコードからセルフタイトルで初の全国流通版だ。ボーカルのいえもとめぐみは、曲によって時には荒井由実であり、大貫妙子であり、土岐麻子のようで絶妙なアプローチで声帯を操る、繊細な感性を持つボーカルが魅力的だ。そして角谷博栄と桶田知道、2人が担うギターと作詞/作曲がバンドの軸であり、ティン・パン・アレー時代の細野晴臣や鈴木茂、松任谷正隆といった、黄金時代のヒットメーカーのいいとこ取りかのようにコンポーザーとしても実力を発揮している。

この3本柱でしっかりと自立しているのに加え、「第4のメンバー達」とも言える、全曲に構成されているストリングス。M6「現金に体を張れ」や、ジャケットイラストに佇む別れの2人を物語るM8「海辺のふたり」では、湿っぽい詞を明るいボサノヴァ調に乗せたアレンジの豊かさも見事。M5「ピクニックは嵐の中で」は奇妙な恋人達の歌詞と気象予報士のコミカルな台風の実況など、楽曲をショート・ムービーのように演出する、角谷のユニークな一面が垣間見える。もはやタイムスリップしてきたポップ・ミュージックではなく、ファースト・アルバムで既に3人のポップ・ミュージックとして開拓され、1人歩きしたポテンシャルの高い作品となっている。

それを顕著に感じるのはM10「恋するドレス」であり、歌詞とメロディー、曲とアレンジがそれぞれ上手く混ざり合い、ここにしかない上質のポップ・ミュージックと完成した。ウワノソラも再び四半世紀を超え、聴き継がれると言っても大袈裟ではないはず。

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