white white sisters: SOMETHING WONDROUS
- By: 森 豊和
- カテゴリー: Disc Review
- Tags: white white sisters


SOMETHING WONDROUS
micro kingdom, 2014年
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シェイクスピア悲劇のヒロインから名をとった「Ophelia」、すぐ騙されるカモを意味する「Instant Dupe」と曲名からして悲観的なイメージが漂う。一方で打ち込み重視から歌モノ回帰して新たな肉体性が宿っている。リード曲「Never Ever Land」やシングル・カットされた「Superneutral」にそれは顕著。名古屋発のエレクトロ・ユニットwhite white sistersは新機軸を打ち出している。しかし基本構造は変わりない。ギター/ヴォーカル/プログラミングの松村勇弥が生み出す電子音が飛び交い、田嶋紘大の創るVJがそれを相互補完、加えて平沼喜多郎(ex. caroline rocks)が叩くドラムが激しく彩る。
ピクシーズやドラムスといった数々の海外アクトとの共演を経て百戦錬磨のはずの彼ら。しかし先日、松村がZIP-FMで美人DJとやり取りするのを聞いていて思わず笑いそうになった。その日のDJは白井奈津、すらりとした90年生まれの彼女はクールさとファニーさを併せ持つ才媛、そんな彼女との4回連続の番組最終回にして松村はなおぎこちない会話を続けていた。まるで人になつかない警戒心むき出しの野生動物。彼の涼しげな風貌の奥には譲れない信念が宿る。その日の会話の端々からもそれは伺えた。
最近シュールレアリズムにはまっているという田嶋の作り出す映像と相まって、松村の音楽は、文明社会の恩恵を受けながらも、それが抱える矛盾を指摘する。特に7曲目「Counterfeit Rainbow」のダイヤを粉々にするMVを観れば、彼らが既存の価値観を破壊し、新しい何かを提示しようとしていることは明らかだ。今回ベースも松村が弾き、エレクトロからより生演奏へ回帰した。最後にできた11曲目「Lust For Love」は甘いソウル・ミュージック。電子音から生まれた大輪の薔薇。それは物質世界の誘惑になびかない彼らだからこそ作りえた美しさだ。