

LTFT Syndrome
BirdFriend, 2014年
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2013年にHEADZより『NEW GAMES』をリリースし、2014年には京都メトロで行われたアート・リンゼイの来日公演や味園ユニバースで行われたROVO主催「MAN DRIVE TRANCE2014」などの大舞台でも多くの観客に驚きを与えたgoat。
そんなgoatそしてbonanzasの中心メンバーである日野浩志郎のソロ名義であるYPYによる新作が自身のレーベル「birdFriend」よりリリースされた。YPY名義の音源としてはハイハットの音色とサンプラーのバグを利用し徹底してミニマルにつくりあげられた『LIMITED DIVISION#1』の印象が強烈だが、本作『LTFT Syndrome』はアンビエントやハウスの要素を強く含んでおり何より過去に日野浩志郎が発表してきた作品と比較し“踊れる”作品となっているのが印象的である。
本作は辺口芳典による詩集『Lizard Telepathy Fox Telepathy』にインスパイアされ制作されたとのこと。この詩集のあとがきの部分で辺口芳典はこんな事を書いている。
“無限の世界や無という絶対的な洗練から抜け出そうとするマヌケな意思を生命の起源だと考える” と。そしてマヌケな意思とは「たくましい行動」や「元気な声」のことだとも書いている。こうした肉体的な動きも連想できそうな力強さやたくましさが『LTFT Syndrome』にはダンスというキーワードを通して確かに息づいている。
考えてみればこうした肉体に直接訴えかけるような音楽というのはgoatやbonanzasにも共通しているものだと言える。goatのストイックなまでのミニマリズムによって導かれる高揚感そしてbonanzasのハードコアをも連想させる凶悪な音とビートには思わず身体が反応し動きだしてしまう。そしてそれは同じく「birdFriend」よりリリースされている湿った犬などの作品にも通じるところがある。だからこそ日野浩志郎が生み出す音楽そしてレーベル主宰者としての活動は決して「実験的」という言葉には収まらない興奮と驚きを我々に与えてくれるのだ。2015年のgoat、bonannzasの活動も勿論楽しみではあるが、立ち上げから一年余りが経ちレーベルの色を明確にし土台を築いた「birdFriend」から生み出されるYPYの活動にも目が離せない。